芦奈野ひとし 『ヨコハマ買い出し紀行(14)』

ヨコハマ買い出し紀行 (14) (アフタヌーンKC (1176))

ヨコハマ買い出し紀行 (14) (アフタヌーンKC (1176))

お祭りのようだった世の中がゆっくりとおちついてきたあのころ。のちに夕凪の時代と呼ばれるてろてろの時間、ご案内。夜の前に、あったかいコンクリートにすわって。

最も愛した漫画がとうとう終わってしまった…。『ヨコハマ買い出し紀行』は雰囲気を楽しむ漫画だという人もいますが、私は「時間」や「空気」を読む漫画であったと思います。14巻にわたって静かに描かれたのは、決して「穏やかな世界」ではなく、「緩やかに終わっていく世界」でした。時間とともに生きる者、時間に取り残されて生きる者、どちらにとっても時間の流れは切なくて、残酷でした。14巻では作品中2度目の*1「みんなのふね」が登場、思わず胸が熱く…*2
星の生命に比べたら人間の一生なんてちっぽけなものだけど、その瞬間瞬間はやっぱり掛け替えのないものです。しかしながら、せっかく「みんなのふね」に乗っているはずの私は、どう考えてもそんな掛け替えのない時間を浪費しまくってます。いや、浪費していると思っているそのくだらない時間や、あたりまえの時間も、それはそれで掛け替えのない瞬間なんだろうか。楽しいことや嬉しいこと、つまらないことや腹の立つこともたくさんあるけど、今の私は結構幸せです。それだけで十分かな。
さて、冒頭で引用した文章は、物語の最後で以下のように締めくくられました。やっぱりそういうことだったんだなぁ…。いつまでもつかわからないこの世界の終わりがこんな風に訪れるなら、それはそれで幸せなことだと思ったりもします。

人の夜が やすらかな時代でありますように

*1:1度目は6巻「みんなの船」。

*2:主にP.102〜103。