浅野いにお 『虹ヶ原 ホログラフ』

虹ヶ原 ホログラフ

虹ヶ原 ホログラフ

お馬鹿なもので、初めに読んだ時は全くと言っていいほど意味がわからなかった。2度目を読み終えると、だいたいの人物相関がわかった。3度目を読み終えて、色々と感じることがあった。ネタバレを多分に含むので、続きを読む記法で。
説明的な部分を流し読みした初回は全く意味がわからないまま読了してしまった。読解力の無さゆえ3度読み返してやっと感想を書くに至ったわけですが、実はこの説明的な部分こそ話の肝だったのだと後に気付きました。個人的にポイントだと思う点、気付いた点などを列記します。すべてが真実ではなく、あくまで私個人が解釈した結果なので鵜呑みなどなされませぬよう。

  • 件(くだん)は疫病や凶作を予言して死んでゆく。虹ヶ原(二児ヶ原)では死んだ件を川に流す風習があった。
  • 件をそこの川に流すと、この場所で必ず双子の件が見つかる。

トンネルに住む怪物の物語と合わせて、ここが重要です。

  • アマヒコは父(木村)と母が離婚した後、母に引き取られる。アマヒコの母は鈴木と結婚するが、翌年行方不明になる。鈴木は後に別の女性と再婚するが、アマヒコの母を忘れられない。育ての両親とアマヒコとは血の繋がりがなく、後の母(鈴木)からは虐待を受けていた。
  • 有江は両親の離婚後、父に引き取られる。父は有江に妻の姿を重ねている*1
  • つまりアマヒコと有江は、離婚によって生き別れた双子である。また、アマヒコが屋上から落下した時期、有江が井戸に落下した時期は恐らく同一である。
  • アマヒコの母はトンネルの奥で自殺している。

ここまでがアマヒコと有江の関係。

  • 榊恭子は有江が日暮兄に襲われているところを助けようとして片眼を潰される。後に羽鳥と結婚し、二人の間には双子が生まれる。
  • 10年の年を経て恭子は離婚に至る。双子には虐待を受けた痕があり、二人とも父親にしかなついていない。羽鳥と恭子はトンネルの前で別れる。
  • トンネルの奥に一つ目の怪物が現れるようになる。後にトンネル内で女性の自殺体が発見される。

ここまでが恭子関連の情報。

  • 蝶にさらわれた人間は永遠の中に連れていかれる。
  • 小松崎の行動は蝶に支配されている。小松崎は現実と妄想の境界が極めて曖昧になっている。

赤い絵の正体や包丁を空振る鈴木のオカンなど気付いた点は他にもまだありますが、話の肝になっているのは上記のあたりだと思います。過去、現在、未来や現実、妄想のリンクは非常につかみづらいですが、恐らくこれはコラージュであり、それこそホログラフであり、読み手が受け取るままに受け取ればいいのではないかと思います。
結局のところ主題は286ページ以降で、後は読者次第なのだと勝手に解釈しました。というかまあ、それ以上はわからんかったわけです。ただ、初めに読んだ時に「何かよーわからんが、気持ち悪いマンガだな」と思った感じは、読み込むほどに薄れていきます。「よくわからん」と思った人はそこで終わりにせず、繰り返し読んでみることをお勧めします。

*1:もしくは性の対象ととらえている。