井上宏生『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』

戦前戦後日本とカレーとの歴史。ああ、カレー食べたい。
著者曰く、カレーはインドの料理ではなく、イギリスから輸入されたハイカラ料理であったからこそここまで受け入れられた、と。ふむふむ、確かにそうかもしれません。今も昔も日本人は欧米コンプレックスですからね。ただ、それは日本でカレーが認知される取っ掛かりの部分であって、日本人が現状として何故カレーライスが好きなのかとは全く別問題なのでは…。
著者あとがきに、本書ではカレーライスを通じて日本人の正体に迫ろうと思った、という旨の一文がありました。なるほど、作中でもカレー史の流れを無視して「日本のアジア軽視批判」や「政府と財閥*1の癒着批判」などが登場。著作に思想を織り込むことを否定はしませんが*2、せめて文脈くらい守って欲しかった。大筋ではせっかく面白いことを書いているのに、唐突に妙な文章が登場するので、そのたびに、本当はカレーなんてどうでも良くて、結局それが言いたいだけなのか、と興ざめ。別にカレー大好きな著者自身「イギリスのハイカラ料理」だからカレーを食べてるわけじゃないでしょう…。
結局、タイトルに対する答えが作品中に出てこなかったので、私が代わりにお答えしましょう。「日本人はカレーライスがなぜ好きなのか」?
答えは簡単、「美味しいから」です。

*1:何故か三菱を名指し。

*2:むしろ思想を表現するためのものですし。